【エッセイ】独りよがりの夜明け(カラスの夢を見る)

カラスたちが夜明け前に騒いでいて、私は目覚めのふちでそれを聞いた。

私は夕方見かけた一羽のカラスのことを思い出す。彼/彼女は水路の近くにゴミを引っ張り出していて、それには食べ飽きたのか、嘴でつついて、まるで遊んでいるみたいだった。

また眠りの波に引き込まれながら、カラスたちはどうして夜明け前に騒ぐんだろう、と思う。たくさんの翼が空気を切る音と、カーカーと何かを交信し合う鳴き声が、静けさの中にしみ込んでいく。

朝が来れば服を着て、昨日を左手でトレースしたような混乱に飛び出していくだけのこと。最初のアラームは6:15。そして次の15分は、驚くほどまたたく間にやって来る。相対性理論。それは、まどろみにも適応されるのだろうか?

起きるの、いやだなあ。

濃度を失っていく闇のなかで私は寝返りをうつ。ベッドのほんのすこし先には、ずっと穴の開いたままになっているウールのタイツがくしゃくしゃに丸まっていて、テレビの前のテーブルには、6切れのうち3切れを食べたラムレーズン・ケーキが取り残されている。

ごちゃごちゃに形成された一日は、何ごともなかったかのように次の日につながっていく。きっと私はまた論点を整理して話せる大人のふりをして、よかった今日も無事に終わったー、と、胸をなで下ろすのかもしれない。

外は雪だ。

街の輪郭が雪でうっすらと白く覆われ、雪は、明るく透きとおった日差しの中できらきらと踊るように舞っている。寒いけれど思わず窓を開けたくなるような朝。通学の子どもたちがはしゃいでいる。私はこみあげてくるなつかしさをもって街を見つめる。

そうか、カラスたちはきっとひと足先に初雪で遊んでいたのかも。

見慣れた風景がすこしちがって見える今日は、心をやさしくゆるめていこう。

すべらないように、足もとに気を付けて。